Cherry Boy


「…は?」

この場の空気に釣り合わなさすぎて、だいぶ感じの悪い「は?」になってしまった気がする。

「ふと気になってさ。あたしは真っ先に食べちゃうけど、中学生くんは?」

「うーん…」

誕生日やクリスマスでよくケーキを食べるが、僕はショートケーキよりもチーズケーキの方をよく食べる気がする。

「最後に残すかな…」

いつの間にかカウンターに置いていた自分の赤ペンを手に取り、くるくると回す。

「へー。」

白い四股皿に1つだけ残されていた白いチーズを指でつまんだ優香さんがこともなげにそう返答する。

「おいしいものは真っ先に食べたいんだよね」

「僕はおいしいものをあとに残す派です」

指から外れて自分の太ももに着地した赤ペンを拾って筆箱に戻す。

「てか、中学生くん。時間大丈夫?」

白いカバンの外ポケットからスマホを取り出した優香さんが、猫の写真があしらわれたホーム画面を見せてくる。

『16:39』の表示で我に返った僕は、慌ててアウターを羽織ってカバンをつかんでそのまま『Cherry』をあとにした。