「席替えはくじで決めます。じゃあ、田中さんの列から引きに来てください」
特に何もないまま冬休みが終わり、惨憺たる結果に終わった実力テストが全教科返却された次の日。
6時間目の総合で急遽席替えすることが決まり、僕は静かに絶望に浸っていた。
僕の席の隣は花宮さんだし、それなりに後ろの方で全然当たらないし、山倉もいてそれなりに授業もサボれるし、できればずっとこの席にいたい。
しかしそんな僕のわがままを、佐藤もクラスメイトも誰も聞いてくれやしない。
無情にも順番が進んでいき、花宮さんがくじを引く番になった。
花宮さんの動向をそれとなく注目し、彼女の新しい席の位置を確認する。どうやら廊下から2番目の後ろから2番目――E5になったらしい。
彼女の両隣はまだ空いている。僕と花宮さんがまた隣の席になる可能性は十分ある。
のんきな希望的観測をかましていると、いつの間にか僕の順番になっていた。
山倉が机をぐらぐら揺らしてきたところで我に返り、くじを引きに行く。
4つに折りたたまれていた紙を震える手で開くと、そこにはC1の2文字。
窓から3番目の一番前――俗にいう『アリーナ席』だ。無意識のうちにため息が漏れる。
先生の目線が突き刺さりまくってサボれないし、黒板は近すぎて逆に見えないという地獄席。
しかも、うちのクラスは女子よりも男子が1人多い。つまり、1人は男子列に入れないわけだ。
男子列に入れなかった男子は、C1に押しこまれる。
がっくりと肩を落としながら席に戻ると、「お前顔死んでるやん」と山倉が半笑いで腕を小突いてきた。
「祝アリーナ席、不登校確定」
愚痴をこぼすと、「不登校確定すんなよ」と山倉が苦笑する。
その彼はちなみに、F6。
廊下側の一番後ろという、ちゃっかりいいポジションを獲得したやつに言われても、哀れまれているようにしか感じない。
「後ろに可愛い女の子がいるんだから、それモチベに頑張れよ」
「えー…」
はたから見れば、僕はただアリーナ席を引いてしまった哀れな男子生徒というだけだろう。
しかし、後ろの女子には失礼だけど彼女よりも花宮さんがよかった、と思うのは強欲だろうか?



