「明日の学活で班内分担と班全体の係を決めて…」
佐藤の非常にありがたい(?)話を右から左に聞き流していると、6時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
わざと緩慢な動きで、公民の教科書とノートをカバンに詰めていると「乙やな、涼」と日月が僕の肩に腕を回してくる。
いつも彼が使っているワックスの独特なにおいが僕の鼻腔をふわりと撫でる。
「あけおめアリーナ席だな。」
後ろから、矢島も声をかけてくる。
「大木、目についた奴当ててくるからお前めっちゃ当てられるかもな」
大木というのは、うちのクラスの社会の教科担任の若い男性教師のことだ。
生徒に親しまれていると言ったら聞こえはいいが、若干なめられているような気がする。
「てかあいつ、この前の振り返りシートで全行書いたのにCにしやがった。許せん」
日月が口を尖らせると、「落ち着け」と矢島が日月の肩に手を置く。
「とりあえず俺はクソアリーナ席とおさらばしたからな。頑張れよ、涼」
矢島が僕の肩に手を置いてへらりと他人事に笑う。
その彼は、F5――つまり、廊下側の列の、前から5番目の席――花宮さんの右隣の席を引いている。
「そうだな。」
日月も矢島に同意する。
日月の席はD4――つまり廊下側から3番目の列の、前から4番目の席だ。
花宮さんの席が、廊下から2番目の列の前から5番目。つまり日月が彼女の左斜め前を引き当てたというわけだ。
「祝不登校確定」
ぼそっとつぶやいて机に突っ伏すと、「この時期に不登校確定すんなよ」と日月が茶々を入れてきた。



