信号が青になるのを待っている間、僕は黒い肩掛けのカバンに入れていたスマホを手に取ってInstagramを立ち上げた。
いつも通り同級生たちのストーリーを流し見していると、花宮さんのストーリーが目に留まった。
1つ目は、『絶対に許しません @R!KA_0828』というシンプルな文字と動画のストーリーだった。
最初は花宮さんがスマホを操作している横顔が映っているが、撮影されていることに気づいた花宮さんがスマホで顔を隠そうとする。
『あー、梨香やめてー‼』
『やめなーい』
撮影主と花宮さんがじゃれ合っているのをよそに、僕が指を伸ばして『@R!KA_0828』をタップすると、そこに現れたのは小山さんのアカウントだった。
見てはいけないものを見てしまったような気がして、僕は小山さんのアカウントを閉じて花宮さんのストーリーの画面に戻った。
最後花宮さんが小山さんのカメラに手を伸ばし、そこでストーリーが終わる。
息つく間もなく、次のストーリーに切り替わった。次の瞬間、大音量で音楽が流れ始め、僕は慌てて音量ボタンを連打して音量を下げた。
ようやくスマホが静かになり、ほっと息をついて画面に目を落とすと『仲直りで梨香におごってもらいまちた』という文字列とともに、花宮さんと小山さんがコーンスープを手に持っている画像が表示された。
ハートボタンを押そうと伸ばした指先が一瞬空中で止まる。でも僕は意を決してハートボタンをタップした。
花宮さんと小山さんとコーンスープの画像に、僕が送ったハートが浮かび上がって消える。
ちょうどそこで信号が青に変わった。
僕はズボンのポケットにスマホをしまい、光に吸い寄せられる虫のように、何のためらいもなく細い路地裏に入った。



