Cherry Boy


冬休み初日のクリスマスイブ。町はクリスマスムードだが、受験生の僕は全然クリスマスムードになりきれない。

キッチンで料理している母親に背を向けて階段を静かに上がり、服かけラックから黒い肩掛けのカバンをそっと外す。

その中に財布と、春上さんから借りた『古都琴子は好きに生きるので、悪しからず』と、冬休み前に学校の図書室で借りた『汝、星のごとく』を放り込んだ。

「自習してくる」

そう言いながら階段を降りて玄関に向かい、スニーカーを履くと、母親が玄関に出てきた。

「最近頑張りすぎだから、たまには休みなさい」

「でも、南陵行きたいから…」

もごもごと口ごもると、「これでなんかあったかい物買っていいから、頑張りなさい」と500円玉を手渡された。

荷物を背負い直して母親の方に向き直ると、目尻を下げて優しく微笑む母親の姿が目に映った。

「いってきます」

そうつぶやいて500円玉をズボンのポケットにしまい、家の扉を開けて外に出る。

ポケットに感じるわずかな重みと冷たさとともに、僕は塾に向かういつもの道に出た。