廊下の採光窓の窓枠に切り取られた、白いフィルターをかけたような景色の中に、白い花がはらはらと降っている。
「おい、何黄昏てんだよ。あ、初雪じゃね?」
山倉の発言を皮切りに、廊下側にいた生徒が一斉に廊下の窓の方に目をやる。
「初雪!すご‼」
いつものおろし髪とは違うハーフアップを楽しそうに揺らす花宮さんに「わかったわかった。初雪はわかったから」と小山さんが冷静な返事を返す。
その様子を無意識で見ていると、「また見てる。まじで好きだよなあ」と山倉がにやにやした表情でそう言いだした。
「な、なにが?」
白々しく知らぬふりをすると、「雪とか、芸術家の顔で見るよなお前。」と僕が想像していたこととは全く違うことを指摘された。
「げいじゅつか?」
小さな子供のようにそう口に乗せると、僕に不似合いすぎて口の中がざらっとした。
「なんとなく思っただけ。忘れてくれて結構」
一通り僕の心をかき乱した山倉が、机の中から筆箱を取り出して勉強を始める。
芸術家、という言葉が似合うのはおそらく彼女だ。
そう思って彼女の方に目をやると、予想通り彼女――花宮さんは、世界を俯瞰で眺める女神のような表情で窓の外をぼんやりと眺めていた。
世界の中心と言われても納得してしまいそうなほど美しいその表情に見惚れていると授業開始のチャイムが校舎に鳴り響いた。
まもなく、「きりかえーやー」と社会科の若い男性教師が荷物を持って教室にやってきた。



