三者懇談が始まり、3年3組は何となく緊張感が漂い始めた。
「俺絶対数学2だわ」「理科大丈夫かな…」「成績やばくて絶望」
カシスオレンジで背伸びしたあの日から2日後の木曜日、僕は三者懇談を控えていた。
成績が返ってくるし、志望校をそろそろ決めないといけないということで家も少しぴりついているような気がして、僕は自習するといって図々しく『Cherry』に入り浸って現実逃避をしていた。
しかし今日は三者懇なので、いやでも現実を突きつけられてしまう。
はぁ、とため息をつくと、「悲壮感漂ってんなー」と前の席の山倉が話しかけてきた。
「だって三者懇だから。現実見たくねえよ」
投げやりにそうつぶやいて机に突っ伏すと、「それな」と山倉が僕の顔をのぞき込んできた。
「12月なのに志望校が決まってないって言ったら、親がピキってた」
「わかる。『あんたもう12月なのに、受験生の自覚がない』って言われた」
俺も同じく、と山倉がうーんと体を伸ばす。
「だいたい志望校の決め方とか教えてくれればいいのに、誰も教えてくんないよな」
口を尖らせた山倉に「制服のかわいさとか、通いやすさとか?」と無難に返答する。
「それは女子の基準な。まあ制服とか通いやすさも重要ではあるけども」
「だよな。あとは、偏差値かな?一番大事な気がする」
偏差値や制服や通いやすさは確かに高校選びで大切だし、一般論でも大切なことだと思うけど、それは建前だ。
僕にとって一番大切で、譲れない条件は『花宮さんが同じ高校にいること』である。
「てか、今日放課後の図書室開放あるから勉強していく?」
そんな恥ずかしい妄想をごまかすように僕は山倉にそう提案したが、「俺三者懇ないし、早く帰りたいから遠慮しとく」と言われてしまった。
「あ、次社会だ。教科書取ってくる」
山倉が立ち上がり、1人になった僕は何気なく廊下の方に目線をやった。



