「あんた、早く起きないと遅刻するわよ‼」
どてどてばたばたと階段を上がってきた母親が、僕がかぶっていた毛布を勢いよく引っぺがす。
「あー、なんじー?」
「7時。ご飯できてるから早く降りてきなさい」
まったく、この子ったらほんとにもう…とぶつくさ文句を言いながら、母親がどてどてばたばたと階段を下りていく。
僕は小さくため息を落とし、毛布を軽く整えてから階段を下りた。
素足で階段を下ると、ひんやりした感覚が足の裏から全身に伝わる。
用を足してからリビングに行くと、「ごめーん、今日これしかないから」といって袋に入ったセブンイレブンのスティックパンをぽいっと投げられた。
地面に落ちる前に何とかキャッチできたそれを力任せに開け、中身をむしゃりと頬張る。
「立ち食いしないの」
母親にとがめられ、しぶしぶスティックパンの袋を小脇に抱えてキッチンに入った。
冷蔵庫から取り出した牛乳を、食器棚から取り出した白いマグカップに入れて、電子レンジに放り込む。
母親が顔を洗いに行ったのを確認し、僕はまたスティックパンを取り出して大きく頬張った。
何回かに分けて1本のパンを咀嚼し、最後の一切れを口に入れた瞬間、電子レンジがあたため終了のアラームを鳴らした。
やけどしないように、マグカップの取っ手の部分を持ってダイニングテーブルまで運ぶ。
ようやく一息ついて、僕はスティックパンをそっと牛乳に浸した。
牛乳を吸って柔らかくなったパンをかじると、ほのかなパンの甘みと牛乳の温かさが体に広がった。



