Cherry Boy


8時23分。朝学習が始まるまでの数十分間、3年3組はにぎやかな声に満たされている。

「梨香おはよー」

「おはよ、桜羽。今日の朝なんやった?」

僕の横で広がる小山さんと花宮さんの会話に、耳をそばだてる。

「チョコチップ入りのスティックパン。あれおいしいよな」

「それな、私も好き」

花宮さんが(はな)ったスティックパン、という7文字に、僕の胸は否応なく高鳴る。

「てか、ストーリーで『本爆買いした』って言ってたけど、何買ったん?」

「ないしょー。気ぃ向いたら教えてあげる」

意地悪な笑みを目元に湛えた花宮さんの肩を小突いた小山さんが「気が向いたらって、絶対教えてくれへんやつやろ」と、わざとらしく顔をしかめる。

その笑みは、僕の知るものではなかった。