「あんたなんか産まなきゃよかった」

その言葉が私の心に深く突き刺さる。母にとっては一瞬の出来事だろうが、私にとっては時が止まったかのように頭の中でその言葉が響いた。

「じゃあ、産まなかったらよかったじゃない!!」

私なりの反抗だった、これ以上私の心が苦しくならないように言いたかった。

だが、母はそれが気に食わず私の頬を叩く。

「親に向かってなんてこと言うの!!」

母は怒鳴り声をあげてたくさんの小言を言ってくるが、聞かずに外へ逃げるように出た。

母にぶたれたところを手で押さえながら、唯一弱い自分をさらけだせる公園へいく。

公園へ着くとベンチに座り、我慢していた涙が溢れた。

なんで私はお姉ちゃんと比べられちゃうんだろ、そう思いながら1人で泣いていた。

「もう、生きるの辛いなぁ...。」

1人で呟いているつもりだった。

「そんなこと軽くでも言っちゃだめだよ」

後ろから柔らかい声が聞こえた。

後ろを振り向くと、綺麗な顔をしている男の子がいた。

自分の弱っているところを誰かに見られてしまったことがすごく恥ずかしかった。

「ごめんなさい、今ここ出てくので...」

早くこの場から抜け出したかった。

「ううん、むしろ気を使わせてしまってごめんなさい」

男の子が心配そうな顔で私に謝りながら、ハンカチを渡してくれた。

「これ、あげます」

私が受け取るのを躊躇していると、男の子が私の涙を拭ってくれた。

「すみません、今度返すので...。」

精一杯、声を出して言った。

「今度会ったときに返してくれれば」

と、優しい笑顔で私にハンカチを渡して帰ってしまった。

しまった、名前を聞き忘れていた。

また会えるかなんてこの広い世界では限りなく0に近いと思えた。

「また、会えたらいいな...。」

月の光に照らされながら、小さく呟いた。