「……金?」
院長先生がポツリと呟いた。
「かね、金ならあります!!」
耳元で叫ばないで欲しい。
「そうなんですか、先生?一体どれくらいーー」
振り返って後悔した。先生は私を見ていた。
恍惚とした笑みを浮かべて。
「この子、この子をあげます!この子は物すごい美人なんです。どんな貴族にも劣らないくらい。いや、むしろどんな令嬢も目じゃありません!!」
「なにを言い出すかと思えば、この国では人身売買はーー」
「だって、この子は魅了の魔女ですから!!」
院長先生は1呼吸も間に挟まずにそう捲したてると、私からローブを剥ぎ取った。
私はその勢いに地面に倒れる。
場が鎮まりかえった。
「え?」
沈黙を破ったのは院長先生だった。
「な、なによ、これ」
視線がささる。子供たちが悲鳴をあげる。
その瞬間、なにも見えなくなった。
「魅了」を、失った。
