半ば放心していたから、細かいことは覚えていないが、
カッコイイ魔女が院長先生の身の上話を語り終えた時、私はどうすればいいのか分からなかった。
愛する先生は、ろくでなしだった。
私が自分を犠牲にして稼いできたお金は先生の宝石やら賭け事やらに消えていた。
けど、私はこの人に育てられたのだ。
私が、私だけでも、この人の味方になってあげなきゃ、この人が一人ぼっちになってしまう。
「どうしてどいて下さらないのかしら?もしかして、あなたもテリー・ドリュミュンの甘い蜜を啜っていたの?」
「……院長先生は、私の母親です」
どうにか絞り出した言葉は、怒りで震えていた。
「もうしばらく、待ってくれませんか。借金は必ずお返しします。だから、どうか」
「そのセリフは聞き飽きました。そう言って、お金が帰ってこないから来たのです」
胃が、キリキリする。
あと、何回魔法が使えるだろうか。どうにかして、金目のいい貴族を捕まえないと。
どうにかして、借金を返さないと。
