「その女に、借金があるのはご存知ですか?」
ふと、恐ろしいほど美しいアルト声が響いた。
声の主はヒールをカツカツと響かせて、男たちの前に躍り出た。
パンツ姿が似合う長身の女性。
その瞳はまるで琥珀のようで、本能が囁いた。
彼女は「魔女」であると。
「え、ええ、知ってますけど」
初めて会った同類。美しく堂々としていて、カッコイイ。
私とは、全然違う。
なんだか自分がとてもちっぽけに見えて、恥ずかしくて、いたたまれなくて、とても魔法を使おうだなんて思えなかった。
「あら、ご存知でしたの?なら、どうしてそこをどいて下さらないの?」
「え?」
「その女は我が商会から借金をしていますの。しかし、本人はまったく返す気がないようで。むしろ、増えるばかり。ほら、先月もサファイヤのネックレスをご購入されていますわ」
「……は?」
「8日前は賭博で500万ジュエルを使ってしまったようで」
500万……?私が、先月渡したお金はいくらだったっけ?
突如、ものすごい力で体を反転させられ、院長先生と向き合った。
先生に掴まれた両肩が痛い。
「ち、違うのよアイズ。ただ、お金を増やそうと思って。あ、あなたに頼りっぱなしじゃいけないと思ったの。今回は、たまたま、そう!たまたま失敗しちゃっただけでーー」
何を言っているのだろう、この人は。
「……その女は最初、窃盗の罪で罰金刑に処せられていました。しかしテリー・ドリュミュンはーー」
