翌日、私は馬車を乗り継いで生まれ育った私の故郷、サーシャル孤児院に向かった。
孤児院の借金返済のために故郷を出たのが、ちょうど5年前。
子供たちはすくすくと育ち、孤児院の借金ももうすぐ返しきれる。
そしたら、私はどうしようか。
私は馬車に揺られながら、そんなことを考えた。
孤児院に戻る?いや、ダメだ。
新しい仕事を探す?それも難しい。
やはり、今の仕事を続けるしかないのだろうか。けど、いつまで持つか分からない。
「ありがとうございました」
そう言って馬車を降りると、胡散臭げに軽蔑の眼差しを貰った。
そりゃ、当然だ。
頭からつま先まですっぽり隠れるローブを羽織り、マスクで目と口を隠している奴なんて、得体が知れない。
……別に、気にしていない。
しばらく歩くと、孤児院の赤い屋根が見えた。
なんとも言えない懐かしさが胸の中から込み上げてくる。
「アイズお姉ちゃん?」
1人の女の子がそう呟くと、周囲の子供たちは一斉にこっちを見た。
「うん、やっぱりお姉ちゃんだ!」
正直驚いた。どうして分かったのだろう。
「お姉ちゃん!」
「おかえりー」
「一緒に遊ぼう?」
「みてみて、4つ葉のクローバー見つけたの」
あっという間に子供たちに取り囲まれて、心が満たされて、身体中がくすぐったいくらいの幸せに包まれた。
「みんなただいま。でも、ごめんね。もう行かないと行けないの。」
『えぇ〜!?』
「またなの?」
「遊んでよ!」
あぁ、可愛い。あまりの可愛さに心が揺らいでしまう。
「うーん、じゃあーー」
