「この、魔女めっっ!!!!」

はい、魔女です。

「知ってるぞ、おまえが悪しき術を使ってることを!!!!!」

大正解です。

「お前せいで俺を人生は最悪だ、この魔女が!!!」

……その通り。帰す言葉も何も無い。

「許さない、お前を殺してやる!!!!」


あぁ、それは、やめて?




もうこの流れもテンプレートと化している。

どこからか取りだした刃物を固く握り締め、こちらに向かってくる男をみて、冷静に居られるくらいは。

「う、ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーーー!!」

私の対処法も決まっている。

ただ、薄汚れたマントから顔を出し、目を、合わせればいい。

すると、決まって最初はみんな動きが止まり、直後にだらりと脱力する。

これで魔法は発動した。

「魅了の魔女、アイズが命じる。ここでのことを忘れ、二度と私と関わることなく、真っ当で善良な平民として生きなさい。」

「……はい。」

男は何事も無かったように動き出した。

男が去ると、家は静寂に包まれた。

ニャー。

「そうね、そろそろここもやばいし、引っ越そうか」

猫のミャーゴの頭を撫でながら、私は疲労からどっと息を吐いた。

「の前に、サーシャル孤児院にお金を渡してこなきゃね」

今月は、先月よりも稼げなかったが、それでも貴族から巻き上げた金だ。
きっと、足りるだろう。