名無し

革靴の音が止まった。


空気が冷える。


私は、息を吸うことさえ忘れていた。


目の前には、吸い込まれそうな程に暗い瞳を持った男がたっている。


黒い服の男たちは、壁際に下がり、立ったまま動かない。


目を逸らしたいのに逸らせない。


足が床に縫い付けられたみたいに。


今すぐにでも逃げたいのに、逃げれない。


体の芯から指先に向かって、冷えていく感覚がする。


檻の扉が今、閉まった気がした。