名無し

「そうはいかねぇな。」と男はつぶやくと私の腕をつかみ、近くに停めてあった車に放り込んだ。


「いたっ...」


小さく呟かれたその声は扉を閉める音にかき消された。


そのまま、車は発進する。


外の景色が後ろへ流れては違う景色が現れる。


何分走ったのか、もう分からない。


ぼーっとその景色を眺めていると、流れていた景色がゆっくりと止まっていく。


着いたんだ。


運転席から男が振り向き、「降りろ。」と言ってきた。


車の中に無理やり入れたのはそっちじゃんか。と思いながら、車から出ると、目の前には立派な木でできた門が建っていた。


門の横には太く達筆な字で【相良組】と書いてある。


ついに来たか。と、覚悟を決める。


男に両腕を掴まれ、歩かされる。


逃げるなんて馬鹿なことはしないのに。


門をくぐると、ずらっと両脇に並ぶ黒服を着た男たちが頭を下げた。


ここまで来て、怖いなんて気持ちは失せた。


まっすぐ歩いていくと、和風だが他のところとは違う雰囲気が漂っている屋敷に着いた。


来てしまったか。