名無し

いつもと変わらない道を通る。


でも、今日は違うような気がした。


ちらっとカーブミラーを見ると、後ろに黒いスーツを着て、サングラスをした男が2人ついてきている。


無意識のうちに歩く速度は上がっていく。


このままどこか遠くへ行ってしまいたい。


そう思ったが、私はどうやら鳥籠の鳥のようだ。


肩を掴まれた。


「ちょっと待ってよ。」


掴まれた場所から感覚がなくなっていく。


男たちの声は優しくもないが、怒ってもない。


ただ、やらなきゃいけないからやるみたいな義務感で話しかけている。


「すみません」


そう言ったつもりだったが、声が出ない。


声が詰まって何も言えない。


何か言わなきゃ。


そう焦っていると男が口を開いた。


「黒田玲王、黒田弥子。それぞれ500万。返済期限は10/31日。とっくのとうにすぎてるぜ。」


また、親のせいで私の生活が壊れる。


怖い。


その感情と同時にやっぱり来たかという感情もおしよせてきた。


「も、もう少し待っていただけませんか?」