目の前の男は、ちらっと私の反応を見てきた。
笑顔のままだったが、その目は笑っておらずやっぱり選別している目だった。
背筋がゾッとした。
息をするのも忘れるような怖さだった。
歩きながら麗さんは色々な質問をしてきた。
「ご飯ちゃんと食べてましたか?」とか、
「学校、行ってましたか?」など、素朴な疑問だった。
答えられずに曖昧に答えていると、麗さんは「大丈夫ですよ。」と言ったが、ほんの一瞬真顔になった気がした。
目線が一瞬だけ鋭くなる。
そして気づいた。
私の私生活を探るための質問だったことに。
カチャリと食器の音で、ぐるぐると巡っていた思考が止まった。
「ここが食堂です。」と言って、扉を開けると、今までの静けさがうそのように騒がしかった。
ふざけ合っている男の人たち
テレビの音、タバコに火をつける音、コーヒーの匂い
普通の家のようだ。
初めて見た。
期待をしたら直ぐに奪われるもの。
それが目の前にある。
空腹と疲労で心がほぐれそうになったが、気を引きしめると、麗さんが「さぁ、入りましょう。」と言って、私の腕を引っ張った。
1歩踏み出すと、一瞬にして男たちの視線が私の方へと向いた。
麗さんが「こちら、今日から一緒に生活することになった澪さんです!!」と場にそぐわない明るい声で紹介をしてしまった。
色々な感情の視線があった。
ある視線は、敵視。
ある視線は、無関心。
ある視線は、興味。
中でもいちばん多かったのは、値踏みだった。
そうだよね。だって、どこのやつかもわかんないのに、我が組の若頭と一緒の生活なんか。
体が固まって逃げたいけど、逃げれない。
それに、逃げたら私の何かが終わる気がして動けなかった。
固まっていると、麗さんが「座って。」と近くにある座布団を示した。
座っていいの?
どうしたらいいかわからず、立ち尽くしていると、近くにいた40代くらいの組員が「立ってたら、疲れんだろ?座れよ」と自然に言われた。
え?話しかけてくれた上に、気遣いも?
戸惑いながらも座ると、ほかの組員さんたちも「水やるから飲め。」「これ食うか?うちの飯はうめぇぞ!!」などと話しかけてくれた。
いつの間にか、目の前の机にはたくさんの朝ごはんが。
麗さんに目を向けると、苦笑しながらも「食べれるだけでいいですよ。」と言われた。
肯定も否定もできなかった。
スプーンを手に取り、1口、口に運ぶと美味しさが舌全体に広がった。
その瞬間、胸の中に幸せが広がり、「ここにいたいな。」と思った。
そんな甘い考えはすぐに消す。
それが癖になっている。
期待したら奪われるんだから。
ふと、麗さんをちらりと見ると、古参らしき男の人が麗さんに「若頭、あの子をどうする気だ?」と話しかけていた。
麗さんは一瞬笑顔を消して「わからない。」と答えていた。
その会話を聞き、スプーンを持つ手が震える。
やっぱり、モノとして扱われている。
ここにいたいなんて思っちゃダメだ。
顔を少しあげると、組員が食べている奥で誰かに睨まれているような気がした。
笑顔のままだったが、その目は笑っておらずやっぱり選別している目だった。
背筋がゾッとした。
息をするのも忘れるような怖さだった。
歩きながら麗さんは色々な質問をしてきた。
「ご飯ちゃんと食べてましたか?」とか、
「学校、行ってましたか?」など、素朴な疑問だった。
答えられずに曖昧に答えていると、麗さんは「大丈夫ですよ。」と言ったが、ほんの一瞬真顔になった気がした。
目線が一瞬だけ鋭くなる。
そして気づいた。
私の私生活を探るための質問だったことに。
カチャリと食器の音で、ぐるぐると巡っていた思考が止まった。
「ここが食堂です。」と言って、扉を開けると、今までの静けさがうそのように騒がしかった。
ふざけ合っている男の人たち
テレビの音、タバコに火をつける音、コーヒーの匂い
普通の家のようだ。
初めて見た。
期待をしたら直ぐに奪われるもの。
それが目の前にある。
空腹と疲労で心がほぐれそうになったが、気を引きしめると、麗さんが「さぁ、入りましょう。」と言って、私の腕を引っ張った。
1歩踏み出すと、一瞬にして男たちの視線が私の方へと向いた。
麗さんが「こちら、今日から一緒に生活することになった澪さんです!!」と場にそぐわない明るい声で紹介をしてしまった。
色々な感情の視線があった。
ある視線は、敵視。
ある視線は、無関心。
ある視線は、興味。
中でもいちばん多かったのは、値踏みだった。
そうだよね。だって、どこのやつかもわかんないのに、我が組の若頭と一緒の生活なんか。
体が固まって逃げたいけど、逃げれない。
それに、逃げたら私の何かが終わる気がして動けなかった。
固まっていると、麗さんが「座って。」と近くにある座布団を示した。
座っていいの?
どうしたらいいかわからず、立ち尽くしていると、近くにいた40代くらいの組員が「立ってたら、疲れんだろ?座れよ」と自然に言われた。
え?話しかけてくれた上に、気遣いも?
戸惑いながらも座ると、ほかの組員さんたちも「水やるから飲め。」「これ食うか?うちの飯はうめぇぞ!!」などと話しかけてくれた。
いつの間にか、目の前の机にはたくさんの朝ごはんが。
麗さんに目を向けると、苦笑しながらも「食べれるだけでいいですよ。」と言われた。
肯定も否定もできなかった。
スプーンを手に取り、1口、口に運ぶと美味しさが舌全体に広がった。
その瞬間、胸の中に幸せが広がり、「ここにいたいな。」と思った。
そんな甘い考えはすぐに消す。
それが癖になっている。
期待したら奪われるんだから。
ふと、麗さんをちらりと見ると、古参らしき男の人が麗さんに「若頭、あの子をどうする気だ?」と話しかけていた。
麗さんは一瞬笑顔を消して「わからない。」と答えていた。
その会話を聞き、スプーンを持つ手が震える。
やっぱり、モノとして扱われている。
ここにいたいなんて思っちゃダメだ。
顔を少しあげると、組員が食べている奥で誰かに睨まれているような気がした。
