名無し

部屋の中は質素だった。


ベッドに机、椅子。


生活するためだけの、余白のない部屋。


ベッドに腰をかける。


ギシッと音を立てて、ベッドが軋む。


胸がいっぱいだ。


目からじわりと何かが滲んでくる気がする。


流したら、負ける気がして。


必死にそれを抑える。


"何泣いてんのよ。泣く子は嫌い。"


昔の記憶が蘇ってくる。


泣かない。泣いちゃダメなんだ。


すると、コンコンと木の扉を軽くノックする音がした。


「失礼します!!」


この場所には似合わない、明るい声が聞こえてきた。


ガチャリと音を立てて、扉が開かれた。


そこには、金髪の男の子がおぼんをもって立っていた。


おぼんのうえには、作りたてなのか湯気がほわほわとたっているシチュー。


急いで、涙をふく。


それに気づいた男の子は、「やっぱり家族が恋しいですか?」と聞いてきた。


首を横に振る。


「こんなのいつもの事ですから。」


本当は、いつもなんかじゃないのに。


そう言うと、男の子が悲しそうな顔をした。