俺はベッドに近付くと、そっと未知の頬に触れた…



未知…



名前を呼んでも未知は起きない…



また未知の頬をそっと触る…



俺はゆっくりと顔を近付けた…



何をしようとしているのか?



勿論分からない訳ではない…



寝ている未知にキスしようとしたその瞬間⁈



ん…んんっ…



不意に未知が動いて寝返りを打つ…



その瞬間俺は我に返った…




自分は今一体何をしようとしていたんだろう?



俺はどうしようもなく自分がいけない事をしようとしてしまったような、やるせない感情が芽生えた…



俺は気付くと未知の部屋を飛び出していた…




ごめん未知…



俺は悪い事をしてしまった訳でもないのに、なぜか急に罪の意識に苛まれた…



俺はいつか…未知をそういう邪な目で見てしまうかもしれない…



未知は俺の事なんか意識していないのに、今までと同じような目で見られない自分に気付く…



もう今までと同じように接せないかもしれない…



俺は自分が怖くなった…



「哲司と平野ってさ、いつも一緒にいるけど、付き合ってるの?実はもうやっちゃってたりして?」

    

クラスの奴らが何の気なく俺たちの仲を揶揄う…



「うるせえ…俺と未知をそんな不潔な目で見んな…俺と未知はそんなんじゃねぇ…」

   

俺は何の気ないクラスの奴らの揶揄いも、くだらないと思って流せなかった…



気付くと俺は揶揄ったクラスの奴らに掴みかかっていた…



「何だよ…ただの冗談じゃん。ムキになるなよ…」



そう言われて俺は感情に任せて掴み掛かっていた腕を徐に離した…



やるせなくなってクラスを飛び出した俺は自分の気持ちに自信がない事に気がつく…



あいつらの言った事を本当に不潔だと言えるのか?



俺はこの前未知に何しようとした?



未知にどんな感情を抱いてた?



邪な不潔な感情じゃなかっただろうか?



このまま未知と何も思わないふりして一緒にいられるのか?



感情を押し殺して一緒にいられるのか?



自分を抑制する気持ちに限界を感じる…



未知は俺といてもただいつも一緒にいる幼馴染みという以外何の感情も持っていなそうだ…



ただの幼馴染みとしか思っていない…



でも、俺はずっと未知が好きだった…



俺はもう未知の傍にはいられない…



いつか未知を傷つけてしまうかもしれない…



未知が好きだ…



でも、今までみたいに一緒にはいられない…



俺は未知と離れる決意をした…



俺と一緒にいても、未知には俺に対する特別な感情があるようには思えなかった…



もう俺に馴れ馴れしく話しかけるな…



これからは登校も別々だから…



そう言うと未知はどうして?何で?と驚いて悲しがっている…



そんな顔をするな…



俺の心は痛んだ…



でも、未知にも俺の事を少しは意識して欲しい…



ただの幼馴染じゃなくて、1人の男として扱って欲しい…



俺は悲しがる未知に後ろ髪を引かれながらも、未知から離れる決意をした…



この選択が正しいなんて思わない…



でも、中2のこの時の俺にとっては、これしか道がないと思った…