○湊のオフィス・7月3週目の金曜日、午後
パソコンに向かって作業する唯。
唯モノ『インターンが始まって3週間が経った。学業との両立なので週3日働かせてもらっている。来週から夏休みに入るので、毎日出勤して集中的に学ばせてもらうことになっている』
由梨江「作業の進捗どう?」
唯モノ『由梨江さんが私の指導係。勉強になることばかりでどんどん自分のデザインがブラッシュアップされていくのが楽しい』
唯「ここまで出来ているんですけどここの余白の上手い使い方が思いつかなくて・・・」
二人でパソコンを覗き込む。
由梨江「余白か・・・ここもう少し下にずらしてここ伸ばすとどうかな?」
唯は指示通り動かしてみる。
唯「えっしっくりきました!なるほど〜こういう使い方もあるんですね」
パソコンを見つめる唯の顔が楽しそうで由梨江は嬉しくなる。
由梨江「その作業終わったら社長の案件手伝ってもらうことになてるからね」
唯「社長の案件ですか・・・?」
由梨江「新人は基本的に一回社長と組んでもらう機会を作るようにしてるのよ。来週から夏休みで毎日来てくれるでしょ?とても勉強になるから夏休みはがっつり社長からアイデア盗んじゃいなさい!」
唯(社長の仕事近くで見られるんだ・・・楽しみ!)


○湊のオフィス・7月最終週の月曜日、朝
唯「おはようございます」
由梨江「あ!唯ちゃんおはよう〜今日から毎日だけど気合いはどう?」
朝からシゴできオーラでキラキラかっこいい由梨江に唯は答える。
唯「社長の補佐に入るのは緊張しますが、とても楽しみです!」
由梨江「良いね〜社長とのミーティングは10時からだから10時前にミーティングルームに行ってね。それまではいつものタスクこなしてて」
唯「承知しました」
自分のデスクでパソコンの電源を入れる。
しばらく集中して作業していたが時計を見ると9時50分を示していた。
必要なものを持って面接をしたミーティングルームの扉を開ける。まだ湊が来ていなくてホッとしていると、後ろから話しかけられた。
湊「おはよう」
唯「っ!おはようございます」
唯は驚いて後ろを振り返ると、思ったよりも距離が近くて顔が熱くなる。
湊「入らないのか?」
唯「す、すみません、入ります!」
唯(良い匂いしたっ!)※恥ずかしそうに俯く
湊は黙って唯の後から部屋に入る。
唯モノ『インターンが始まってからの1ヶ月は社長と関わることはほとんどなかった・・・久しぶりにきちんと向かい合うと緊張するな・・・』
二人が席につくと湊が口火をきる。
湊「早速始めるか」
唯「よろしくお願いします」
湊「今回手伝ってもらうのは某コスメブランド新商品のWeb広告だ」
湊は電子パッドを唯に見せる。
唯(うわ〜ここのブランド私も使ってる・・・)
湊「コンセプトや細かい指示はそこに載っている通りだ」
唯(このブランドの新商品のWeb広告を私が・・・?)
湊「不安か?」
不安が顔に出てしまった唯に湊が問いかける。
唯「・・・いえっやらせてください!」
唯は不安を振り切るように湊の目を見て伝える。
唯の瞳の奥に宿るデザインへの好奇心が垣間見え湊はふっと頬を緩める。
湊「君だから任せるんだ。フォローはするから好きなようにやってみろ」
唯(私だから・・・)
唯「ありがとうございます、頑張ります!」