「はあぁ、やっっと終わった…」
ぶちまけてしまったチョークの粉やら、小さいかけらを拾い集めて、自分も最低限外に出られるような状態になったので、私は学級日誌についている教室の鍵で教室を閉めた。
思いがけないハプニングのせいで、帰るのが遅くなった。大きな採光窓からは、夕焼けの光が少し顔を出している。
途中、職員室に寄って学級日誌を返却してから昇降口に向かう。
靴をローファーに履き替え、駐輪場にぽつんと一台だけ止められていた黒い自転車にまたがる。
「ふぅ、さっむ」
12月も近いので、さすがにパーカー1枚じゃ心許ない。明日はちゃんと暖かいのを着ていこう。
心の中で静かにそう決意しながら、自転車のペダルにさらに強い力をかけて加速する。
我が家のある静謐な住宅街に入ると、ローポニーにした毛先が風にあおられて、ばたばたと暴れた。



