忙しい中でも返信してくれる。
それだけでもありがたい。
澪は二人分のプリントやその他書類、英語の教科書と電子辞書とペンケース、それと差し入れのお菓子やジュースをバックに詰め込み2人が所属する事務所へと急ぐ。


澪「大都会だし、帰りにどっかでお茶でもしようかなぁ♪」


Instagramで見た可愛いクマさんのラテアートを出してくれるお店も、柄猫モチーフのパフェを出してくれるカフェも、いつか行ってみたい場所として登録してある。いずれも事務所からそう離れてない。きっと2人は忙しいだろうし、2人の用が済んだらすぐ帰されるだろうからどっちに行こうかなと気持ちは早くも事務所を出た後に向いていた。


澪「紫遊さんと環さんに言われて来ました。クラスメイトの月森です。学校のプリントを渡しに来ました」


守衛は確認すると、訪問者タグを渡されスタジオ番号を告げられた。
コツコツと足音が響く。場所によっては収録や撮影をしており、思わず横目で見てしまう。
キレイな人、可愛い子、完璧なポーズ、真剣な眼差しでマイクに向かう人……本当に芸能界だと改めて感じた。
あちこちから流れる音楽に、思わず大好きな歌を口ずさんでしまう。


澪「Trapped in your shadow♪
I’m scared of love but craving you♪」

「ちょいまち……」


手首を掴まれる。
真っ黒なパーカーフードを深くかぶった、背が高い……男性。