向田:「そして翌朝、樹さんを連れて日本を発ちました」
日和の瞳からすーっと涙が流れる
向田:「アメリカに着くまでに何か吹っ切ったのでしょう、樹さんはそれから人が変わったように勉学や仕事に打ち込み、そして…笑わなくなりました」
日和:……くっ、
日和は両手で顔をふさぎ、溢れる涙を必死で堪えていた
向田:「わたしが日和さんとの仲を無理やり引き裂いたせいです。会社でもみんながみんな樹さんを受け入れていたわけでないので、陰で相当辛い思いもされていたと思います。そんな時に日本から届いた荷物を見て、樹さんはこう言ったんです」
" 日和は僕が迎えに行くのをきっと待っていてくれる "
向田:「何度も何度も荷物をひっくり返して何か探しているようでした。でもその時そう言って笑ってくれたんです」
日和:あっ…写真たて……
向田:「その思いだけで、社長が亡くなられてからも会社を背負い頑張ってこられました。そして樹さんが社長に就任して…やっとこの夏に大きなプロジェクトを成功させ会長を黙らせることができたんです」
日和:樹くん…
向田:「そして保留だった響子さんとの婚約も解消され、わたしと響子さんとの仲も取り持ってくれて…それでやっと樹さんは日和さんを迎えに日本に…」
ビクっと日和の体がこわばる
向田:「本当に樹さんには日和さんと幸せになってもらわないと、わたしは樹さんに申し訳が立ちません」
日和はうつむき手をギュっと握りしめながら
日和:「…ごめんなさい」
向田:「日和さん?」
日和:「ごめんなさい、私は…私は樹くんと一緒にアメリカには行けません。他に好きな人がいます」
ポロポロ涙がこぼれ落ちる
向田:「え?!」
日和の悲痛のすすり音だけが小さく響く
向田:「ちょっと待ってください! え? じゃ樹さんは…」
日和:「ごめんなさいっ」
日和はお金を置いて、一人店を出た
日和:…樹くんがいなくなった後、私はみんなのおかげで笑ってこられた
私が楽しい学生生活を送っていた時に樹くんは…
私がずっと待ってると信じて……
どうしよう…こんな気持ちじゃ樹くんに会えない
これ(指輪)返さなきゃいけないのに…
日和は思いつめたまま街をフラフラさまよっていた
