向田:「あの日、あなたの16歳の誕生日…わたしは樹さんをアメリカに連れて帰るために日本に来ていました」
樹:「向田さん?」
日和と別れて帰って来た樹は、マンションの前にいた向田を見つける
向田:「樹さん、お話があります」
真剣な面持ちの向田を、樹は部屋に迎え入れた
樹:「どうされました? 響子は一緒じゃないんですか?」
向田:「今回はわたし一人で来ました。あなたを連れ戻すために」
樹:「え?!」
向田:「社長が、あなたのお父様が倒れました」
樹:!!
向田:「心臓発作です、今のところ安定しておりますが、この先仕事に復帰できるかどうか…」
樹:「え? 今まで心臓が悪いとか聞いてないですが…」
向田:「…表向きにはそういうことに…特にあなたには知られないようにしていましたから」
樹:「……、医者はなんと? 命に別状はないんですか?!」
向田:「それはわたしの口からは…帰国して直接医師に伺ってください」
樹:「……わかりました、明日、日和に会ってその後すぐに一時帰国します」
向田:「いえ、日和さんに会わせるわけにはいきません。今すぐここを出て、明日朝一で帰国していただきます。空港の近くにホテルを取ってます」
樹:「どうしてですか!?」
向田:「会長命令です! 樹さんには向こうの大学に進学し、仕事も覚えてもらわなければいけません。これから樹さんはお父様の代わりにHAYAKAWAを背負っていってもらいます。もちろん伏見家との縁談も続行です。そのためには、日本でのことすべて切り捨てていただきます」
樹:「ちょっと待ってください、向田さんは本当にそれでいいんですか?」
向田:それでいいかなんて……日本で響子さんと気持ちが通じ合って、アメリカに戻ってからも順調に交際していた
でも会長に知られ、今回こんなことになって……会長には恩がある、会長の命令は絶対だ!
それに…命令に背けば響子さんに矛先が向くかのように匂わされて…
向田:「会長の命令は絶対です」
樹:……っ、とにかく父さんが心配だ、ここは向田さんの言うとおりに
樹:「わかりました、ですが日和のことは、日和だけは譲れません! 日和に連絡させてください」
樹がスマホを取り出した
向田:「スマホを渡してください」
樹:「嫌です!」
向田:「日和さんとこれからも関係を続けるようなら、日和さんやその家族を社会的に消す方法はいくらでもあると会長はおっしゃってました」
顔色一つ変えず、手を差し出す向田
樹:…あの人ならやりかねない…でも…
…日和…日和……っ
仕方なくスマホを差し出す樹
そのまま向田はスマホを水没させた
向田:「パスポートはどこです?」
樹:「…寝室の引き出しに」
向田はパスポートを取りに寝室に入った
その隙をついて樹は日和との写真たての裏に " 必ず迎えにくる " と走り書きするのがやっとだった
