ー 樹くんの言葉が、樹くんの想いがグルグル頭を駆け回る
気が付くと、目の前に座っていた樹くんはいなくなり、代わりに祐生くんが座っていた
そしてテーブルの上には小さな箱と連絡先が書かれたホテルのカードが置かれていた
祐生:「…か……大丈夫か?」
日和:「祐生くん…」
祐生:「勝手に引き合わせてしまってごめん」
首を横に振る日和
祐生:「昨日、日本に帰ってきてそのまま桐谷に会いに行ったらしい。でも小林に見つかって追い帰されたって言ってた」
日和:「和泉くん、ひと言もそんなこと…」
祐生:「そりゃあいつの立場じゃ言えねーよな。本当に桐谷を迎えに来たみたいだし」
そう言ってテーブルの上の小さな箱に目をやる祐生
日和は箱を手に取り開けてみる
キラキラと光るダイヤの指輪が入っていた
日和:樹くん…
日和は指輪とカードを眺めながら、樹の言葉を思い出していた
日和:「ハッ、祐生くん! お店! ごめんなさい、私のせいでお店開けてない!」
祐生:「ああ、そんなこと気にすんな。それよりちゃんと考えて答えを出せよ。どっちに悪いとかじゃなく、桐谷がどうしたいかだ」
日和:「…うん、ありがとう」
日和は一人で考えたいと言ってアレーズを出て、街をブラブラ歩いていた
日和:……樹くん、すっかり大人の男の人になってた
あの頃大好きだった…ずっとずっと待ってたのに…会えて嬉しかったのに
……あの頃と同じ気持ちにはなれなかった
やっぱり…今の私は和泉くんが好きなんだ
夕方、和泉くんと会う前に、樹くんの気持ちには答えられないってこれ返しに行こう
そう思いホテルに向かって歩き出した時
向田:「日和さん?」
声をかけられハッとする
日和:え? 向田さん?!
向田:「よかった、日和さんに会えて」
日和:……
どうしても二人で話がしたいと言う向田に押し切られ、小さなカフェに入る日和
向田:「一昨日 急に樹さんが日本に発ったと聞いて慌てて追いかけて来たんです。樹さんにはもう会われましたか?」
日和:「…はい」
向田:「そうですか、よかった……日和さん、その節の謝罪をさせてください。すべてわたしがやったことです。樹さんを脅してあなたから引き離したのはわたしです。今さら謝ってすむことじゃないですが、本当に申し訳ありませんでした」
向田は頭をテーブルに押し付けた
日和:え?! 脅してって……
日和:「あ、あの…何のことかよく…と、とにかく顔を上げてください」
向田:「え? 樹さんに聞いたのでは?」
日和:「…あの時、何があったかまでは聞いていません」
向田:なっ…全くあの人は……
向田は大きくため息をついた
向田:「では、あの時 何があったのかわたしからお話しします」
