いつもの公園。
良い事があった日も、悪い事があった日も、日課のように毎日決まった時間に公園に行く。
そして、屋根付きベンチに腰を下ろす。
今日はいい天気だ。
鳥が鳴いてる。空高いところで飛んでる。
鳥になりたいなとふと思う。
空が飛べたらどんな感じだろう。気持ちがいいだろうな。そんな事を考えてたら、こっちに近づいてくる足音が聞こえる。ホラー的な展開ではない。この足音の持ち主がわかるから。
「なにぼーっとしてるの。」
ほら、いつもの聞き馴染みのいい優しい声。
「鳥になれる方法を考えてたの。」
半分ほんとうで、半分、嘘。
「鳥にはなれないよ。」
君はケラケラおかしそうに優しく笑う。
「わかんないでしょ。」
そんなにおかしい事を言ったかな。
あんまりおかしそうに笑うから私は頬を膨らませて見せた。そんな私の顔を見て、吹き出す君。


彼の名前は、柊湊人。
彼とはこの公園のベンチで出会った。
彼と出会って2ヶ月くらい。他人以上友達未満の関係。

「ちょっと寄って。」
「はぁーい」

そう言って彼はいつも隣に座る。
そして一緒に空を見上げる。

少し沈黙が漂う。沈黙を破ったのは私だった。
「ずっと聞いてなかったけどさ、」
「んー?」
「湊人って毎日公園に来るけどニートなの?今日平日の昼間だよ?」
そう。今日は水曜日。社会人はお仕事。学生は学校。こんな日に、こんな時間に、会って話すのは普通は無理だ。
「それ、君が言う?」
そう言って湊人はけらけら楽しそうに笑っている。
「まあ、たしかに。」
普通なら学生は学校で友達と先生とわいわいしながら、勉強する時間。普通なら社会人はお金を貰うため、みんなで力を合わせて目標に向かって頑張り、時には失敗し、上司やお客さんに怒られる。それでも、頑張り続ける。
みんな楽しそうだ。だってキラキラしてる。
輝いてるその姿が、私には、もう見れない…

急に湊人の顔が近づいてきた。
「わっびっくりした。急に顔覗きこまないでよ。」
「ふふ、ごめんね。びっくりした?で、なーに考えこくってたの。」
「別になんでもないよ。」
私の言葉にちょっと不服そうだったが、深くは聞いてこなかった。