「これで部活を終わります、礼」

『ありがとうございました!』

スクールバッグを肩にかけると、「ゆーりか」と誰かに肩をたたかれた。

紗那(さな)!」

「一緒に帰ろ、御園くんたちも誘って」

つややかな彼女の茶色いボブが、彼女の動きに合わせてさらさらと揺れる。その姿は、同性の私でも惚れ惚れしてしまいそうだ。

「うん。あ、今日光里(ひかり)(かい)、誘う?」

私がそう問いかけると、紗那はぱちぱちと瞬きをしてから私に返答した。

「うーん、まあいいや。あっちはラブラブだし、2人で帰るっしょ」

廊下の大きな採光窓から差し込む夕日が、彼女の顔を赤く染めて、頬にまつ毛の複雑な影を落とした。

「だよね」

紗那に同意すると、「早瀬(はやせ)ー、一緒に帰ろーぜー」と瀬名くんが私たちの前に回り込んできた。

隣には御園くんもいる。

「わかった」

愛らしい猫のような瞳で微笑む紗那に、「じゃあ帰ろっか」と瀬名くんがいつもより柔らかな笑みを浮かべる。

その笑みは、私じゃ到底観測できないものだった。

「俺、下駄箱こっちだから。校門のとこで待ってて」

御園くんが私たちから1歩離れると、「私たちも靴履き替えよっか」と紗那がこちらに向いた。

「う、うん」

ぱかっと下駄箱を開け、黒いローファーに足を滑り込ませる。

「じゃあ、一緒に帰ろっか」

紗那が微笑むと、「望月さーん!早くしないと最終下校間に合わないよー‼」と御園くんの声が聞こえてきた。