未来からの鏡 5年先の未来が見えたのよ、鏡に映っているカレンダーは2029年だったのよ

【おはよう】

 再び、屈子が鏡を取り出した。

「これでパネルを映してみよう。」

 そうだ。未来の看守がパネルを操作するかもしれない。
 その時に、どの数字を押したが見ればいい。

 鏡の反射でパネルを見ると、しばらくして看守がこちらへ向かってきた様子が映し出された。

 ポチポチ。

「7と6ね。」

 ポチ。

「うーん。看守の体に隠れて、最後のボタンが見えなかった。」

 屈子が困った顔で言った。

 みんなで困って言うと。

「時間もないし、もう、あなたの誕生月にしちゃいなさい。」

 未来の屈子が真顔で言った。

 3人は内心、仮にもセキュリティーの人なのに良いのかなって思った。


 しかし、時間が押している。

 私の誕生月、つまり5を押した。

「カチッ」

 どうやら鍵が開いたようだ。

 ただの偶然だろうが、これで牢を出ることができる。

 しかし、この建物から出られるだろうか。


 私がそう思っていた矢先に、屈子がフィルムを取り出した。

「これをもう1枚貼って、さらに直近の未来を見て、敵がいないところを通って脱出しよう。」

 まだ持っていたのか。私はあまりにも用意周到なので感心してしまった。『念のため主義』が度を過ぎているだけかもしれないが。


「とにかく急ぎましょう。」

 未来の私と未来の屈子が言った。

 私たちは鏡を見て、敵のいない所を探しながら、移動した。

 階下へ、階下へと向かおうとするが、なかなかうまくいかない。

 なにせ、直近の未来がわかっても、敵はたくさんいるのだから。


 そして、大きな扉を見つけて、ここかなと思って開いてみた。

 ……

 大きな夜空が見える。

 外へ出られたと思ったら、そこは大きなバルコニーのようだった。

「まだ1階ではないのか。」

 私はそう呟いた。


 みんながガックリしていると、バルコニーの陰から何かが現れた。

 いかにも鋭い目つきの男がこちらも睨んでいた。

「あの顔はニュースで見たことある。テロ組織のリーダーだ。」

 未来の屈子が顔を険しくして言った。


 男がこちらを見ている。

「お前たち、それぞれ顔が似ているな。」
「あの鏡は現在と過去を行き来することができるという噂は本当だったか。」
「穂乃花 光か、やはり利用価値があるな。」

「穂乃花以外は別にいらないな。」

 そう言うと、男は私と屈子に殴りかかってきた。

 私と屈子は間一髪、よけた。

 屈子はその衝撃で鏡を落としてしまう。

 見た感じ、屈子も鏡も無事なようだ。

 ただ、ちょっとの間、屈子は鏡を眺めていた。

 そんな余裕はないはずだけど……と思っていると、屈子が私に囁いてきた。

「鏡に映っている、あのフェンスが傾いている! もうじき壊れるかも。」
「どうにか、あそこに敵を追いやれないかな。」

 近くにいた未来の屈子が小さな声で言った。
「私が囮になるわ。」

 こちらの返答を待たずに、未来の屈子は男に若干近づき、少しずつ、フェンスのほうへ下がっていった。

 私と屈子もちょっとずつ男に後ろから近づいていった。

 フェンスに男が近づいた瞬間、未来の屈子はずっとしゃがみ、こちらのほうへ転がって、その後体勢を戻した。

「はっはっは、どうしたのかな?」
 男はフェンスを堂々と触り、こう言った。

「このフェンスが壊れかけていたことは知っていたよ。」
「あらかじめ知っていれば、どうということはない。」


「!!!」
 あっけにとられた私達であったが、私も鏡を持っていたことに気がづいた。

 すかさず、月明かりを男の顔へ反射させた。

 弱い光だったが、一瞬油断したのか男がフェンスに掴まりながらよろけた。

 その隙をついて、今度は未来の私が男の足で蹴りを食らわせた。

「なんだと!」
「うぉぉぉぉぉぉ~」

 そう言いながら、男は落ちていった。


 その後、どうやったか忘れたが、私達は施設を抜け出していた。


 私達は4人で話した。

・テロリストのリーダーを倒したところで、また再び襲われない保証はないこと。

・いつまでも私と屈子がこの未来にいるわけにもいかないこと。


 私と屈子は不安だったが、とりあえず過去へ戻ることにした。

 2枚の鏡を使って、鏡面に手を合わせ、吸い込まれるように過去へ戻っていた。



 私と屈子は元の世界へ戻ってきた。

 未来の私は、鏡を壊してくださいと言っていた。

 また未来に来られても困るんだろう。


「完全な合わせ鏡をすると壊れるみたいね。」

「そうね。未来の私が言ってたね。」

 私は鏡をもって、屈子のほうへ向ける。

 屈子もこちらを見て鏡を向ける。


 何秒か経って、「ぼんっ」と言う音を立てながら、鏡は崩れるように壊れた。


 私は正直、鏡を壊すのは疑問だったが、これでいいんだと言い聞かせて、日常へ戻った。



 翌日。

 学校の教室で。

「おはよう。屈子!」

「おはよう。光!」



おわり。