好きすぎる

人には、普段の自分とは全く違う一面があると思う。
私だって、そのうちの一人。

私、姫百合花は、可愛いものが大好きな癒やし系女子という“設定”を学校で守っている。
だって、自分の本性がばれたとき、あの子はそんなことしないでしょ。って思われたり、言われたほうが好都合じゃない?
「あ、花ちゃんおはよ」
「わぁ〜、瑠流ちゃんおはよぉ」
“ニセ”友達の瑠流。私の本性を知らず、いつも呑気で裏表のない素直で羨ましいほどに人気な子。
そんな瑠流にニセの笑顔を浮かべ、語尾に小さい「ぉ」や「ぁ」、「ぇ」、「ぅ」、「ぃ」をつけて微笑む。最後に小さいあいうえおがあれば癒やし、というよりぶりっ子のような天然に思われる。
正直、どう思われててもいいけど、本来の自分との差が大きかったほうが良い。
けど、嫌われたくない人が一人だけ、いる。
それは…
「あ、鬼城くんもおはよ」
瑠流があいつに挨拶をする。
鬼城雷斗。私が初めて恋…気になった男子。だけど、すごく冷たい。
「…」
瑠流の挨拶も無視。いつものこと。無視されるってわかってるはずなのに、瑠流はなんでわざわざ声かけるんだろ。
まあだけど、一応私も言っておくか。
「鬼城くん、おはよぉ〜」
ニコッと圧をかけて微笑む。
「…はよ」
え?
今、返してくれた?夢じゃない?
予想外すぎて一瞬「はっ!?」って言いそうになった。危ない危ない…。
「あのぉ、鬼城くん…?」
「…」
あれ、無視された。やっぱり勘違いかー。残念。

〜夜〜

「あーだっる!今日の連中雑魚すぎだろ」
現在夜9時。
私は不良仲間と喧嘩を売ってきた奴らの相手をしてボコボコにして一人で帰る途中。
「チッ…あいつらの返り血スカートについてんじゃん。最悪」
制服で来なきゃよかった。雑魚いからって油断してたわ、返り血はつくよな普通。
家で落とせっかなー。メンドくせぇ。
「ぁ…」
スカートの血を目立たないよう隠してから顔を上げると、可愛いものがたくさん売ってる文具屋の前に、何かを持ってにらめっこをしている鬼城と目があった。
なんで、こんな遅い時間に鬼城がいんの…。
「姫百合さん……。わっ、僕がここにいたのはクラスの人に内緒にして!」
「え…?は?“僕”?それにその声…」
鬼城の声は高くて可愛い声だった。それに、一人称が“俺”のはずな鬼城が僕?
「どういうこと?」
「//// ん?てか姫百合さん、スカートに血…」
あ、しまった!!