看護実習生由美〜時を超えて

恋愛(ピュア)

看護実習生由美〜時を超えて
作品番号
1766783
最終更新
2025/11/25
総文字数
8,478
ページ数
6ページ
ステータス
完結
PV数
117
いいね数
0
平成29年3月。熊本大学付属看護大学3年生の田中由美(21)は、3日後から始まる精神科病院での看護実習を前に、仲間たちと飲み会に参加していた。実家はミカン農家で、祖母のしつけで門限は21時。恋心を寄せているのは、盲目のシンガーソングライター・川口学(熊大法学部4年)だった。

実習初日。父の車で病院に送られた由美は、近代的な精神科病院に驚きつつも、利用者と接しながら研修を開始する。そこで出会ったのが、40年間入院生活を続けている相馬龍太郎(還暦間近)だった。物静かな彼は、由美の顔を見て、若き日に愛した女性・片桐康子の面影を重ねる。

由美は精神科実習の不安を抱えながらも、龍太郎の穏やかさに興味を抱き、少しずつ距離を縮めていく。

そんな折、病院で川口学のミニライブが開かれることになり、由美は思わず震えるほどの衝撃を受ける。ライブでは川口学本人と初めて言葉を交わし、彼の母から次回ライブのチケットまで受け取り、夢のような時間を過ごした。

一方、龍太郎は由美の優しさに触れるたび、心の奥で長年封じてきた“過去”が揺れ始めていた。

——昭和53年。
両親を亡くし、新聞奨学生として上京した18歳の龍太郎は、デパートのとんかつ屋で康子と運命的な出会いを果たす。富士急ハイランドへ行き、ジェットコースターに乗り、横浜のホテルで一夜を過ごした。しかし幸福の絶頂で心が耐え切れなくなった龍太郎は、精神の均衡を失い、品川駅で飛び込み自殺未遂を起こす。身元不明のまま医療保護入院となり、それから40年、退院できぬまま人生が止まってしまったのだった。

実習の7日目。由美はデイケアの日帰り旅行で、龍太郎を励まそうと手を取り、ジェットコースターへ強引に連れ出す。恐怖と興奮が入り混じる中、龍太郎は再び「恋をした時」の胸の高鳴りを覚える。由美の温もりは、長年凍りついていた彼の心を動かしていた。

実習最終日。龍太郎は徹夜で自分の半生を綴った小説「走馬灯」を完成させ、由美に手渡す。
「辛い時の励みにします」
そう言って微笑む由美の姿は、龍太郎の失われた40年に、やわらかな光を灯した。

物語は、由美が父の迎えを待つ夕暮れの病院で、龍太郎と最後の会話を交わす場面へと向かっていく——。

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