ソラが笑った日

 休日の朝。
「ほら、ソラ! 今日は外に出るの!」
 真奈は半ば強引にソラの腕をつかみ、マンションの玄関へ引っ張っていった。

「……本日の外出の必要性は、低いと思われます」
「いいの! 必要性とか効率とか禁止! 今日はデート気分なんだから!」


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 ショッピングモールに足を踏み入れた瞬間、ソラはぴたりと動きを止めた。

「……通行効率が著しく低下」
「止まらないで! みんなの流れに乗るの!」
「……はい。流れに乗ります」

 ぎこちなく歩き出すソラ。
 その真面目すぎる“流れに乗る努力”に、真奈は思わず笑ってしまった。

(ほんとロボット感すごい……でも。
……一緒に歩くの、悪くない)


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 しばらくすると、ソラが周囲の観察を始めた。
 仲良しカップルがソフトクリームを分け合っているのを見つめて――数分後。

「……真奈」
「え?」

 振り向くと、ソラが不器用にソフトクリームを差し出していた。

「これを持っていると、人は幸せそうに見えます」
「な、なにそれ……!」

 真奈は赤面しながらも受け取る。

(いや、完全にデートじゃん……どうしよう……///)

 そしてソラ自身もソフトクリームを口に運ぶ――表情は相変わらず無機質。

「ちょっと! その冷たい顔で食べるのやめて! 笑顔笑顔!」
「……笑顔、学習中」

 ぎこちない笑みでソフトクリームを食べるソラに、真奈は吹き出してしまった。

「もうっ! その顔なに~!」
「……ですが、真奈は笑っています」
「……うっ……なにそれ……もう!」

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 歩いているうちに、アクセサリーショップの前で真奈の足が止まった。
ショーウィンドウに並ぶ、小さなペア風のペンダント。

「ねぇソラ、これ似合いそうじゃない?」
「装飾品の実用性は不明ですが……」
「いいの!ほら、一緒につけよ」

 真奈は同じデザインを二つ購入し、背伸びしてソラの首にかけてあげた。
至近距離、ソラの瞳が真奈を映す。
「……これは、大切な意味を持つのですか?」
「もちろん。“大事な人同士の証”だよ」

 ソラは一瞬黙り、そして静かに答えた。
「……大切にします」

 胸元で小さく光るペンダント。
真奈の心臓は、さっきよりもずっと速く鼓動していた。

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 帰り道。
ソラは真面目な顔で「次回は効率的なルートを検討します」と言った。
「……効率とかいらないの!」
 思わず声を上げる真奈。

(でも……なんか、本当に恋人みたい)

 胸元のペンダントがきらりと光り、真奈は思わず微笑んだ。