なんてことないように言う室川くんに、私のほうが驚いた。
「え、痛くないの!?」
「慣れてるんだよね。それに、振った理由聞いたくせに怒ってビンタ。理不尽すぎるよね(笑)」
あはは、と軽く流す室川くん。
どうしてそんなに平気でいられるの…?
私だったら泣くかもしれないのに。それに、慣れてるって…痛みとか、傷ついたりしないのかな。
そう思っていると、室川くんが私の顔を見て一瞬驚いたようだったけど、すぐに微笑んだ。
「ビンタされてない篠原さんがなんでそんな痛そうな顔すんの。普通逆でしょ」
普通って何が…?
よくわからない。それでも私は慣れてても感情を表に出したほうが良いと思ってる。
泣き虫、弱虫、隠したい部分は隠してていい。けど、室川くんの場合は違うでしょ…?
「優しいね、室川くん。振られた人のこと、考えてる」
「えっ?どこが?俺、興味ない子は振るし、ちょっと顔がタイプだったら遊んで捨てるよ?」
「それは、悪いとこだけど。振られた人のほうが傷ついてるから、笑ってるのかなって」
思い違いだったとしても、あっていたとしても。
室川くんは振られた人の気持ちをなんとなくわかっているんじゃないのかな。
何も知らないし、全く関係ないけど、少しだけ…室川くんの表情をみてるとわかる気がする。
「篠原さんって…面白いんだね。意外」
「…」
それは、褒めてる?