甘々とロマンス中毒

千花くんのパパが、一泊二日の旅行券を会社で貰ったから、夏休みにみんなで遊びに行くことになったの。と、繋ぎかけた言葉を呑み込む。

あやちゃんを盗み見した。

口がへの字、眉間に皺が寄り、難しそうに顔を顰めている。と思えば"心ここにあらず"で、ぼうっとしていて、解けない謎が深まって。

傾げた首が、また、ぐぐっと横に倒れそで。

ぱち、ぱち。無垢な瞬きを二回。
あやちゃんだけを追いかける瞳を囲う、密度の高い睫毛を上げた。


「あやちゃん、変な顔してる」

ご機嫌ななめ?それとも……。

「やっぱり眠たいんでしょ」

「………さあ」

「(“さあ”って。んん〜〜……)」


わ…っ。視線がそれた。
黒のさらさら前髪を掻くあやちゃんに、右頬はぷくっと空気を溜める。一拍置いて、あやちゃんの視線が、うるうる瞳の私に戻った。

「一咲、ハンバーグ作ろうか」

「はあい」

あれ?あやちゃんの耳、赤いなぁ。

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

あやちゃんがスープとサラダを担当して、私はハンバーグ担当になったの。もちろん、ふわふわオムライスも作ります。

「(よーし、一番美味しいの作ろうっ)」

意気込む私の隣で、あやちゃんは手際よく野菜を刻んでいる。

スープの下拵えをするあやちゃんは、いつもの雪村あやみくんである。意地悪王子さまは不在。

もしかして、眠たい日のあやちゃんは気分屋…?なのかも。

「(料理も出来るんだ。欠点がないなぁ。あやちゃんの出来ないコトって、何だろう…?)」

かっこよくて優しい王子さまは、頭脳明晰な上に料理も上手で……。完璧王子さまのあやちゃんを横目に、ふわりと今まで触れようとしてこなかった部分に向き合う。

———…あやちゃん、彼女いるのかな?