甘々とロマンス中毒

「あやちゃん。…下ろしてほしいです」

あたふたしてるのは私だけで、あやちゃんは平然としてる。

気恥ずかしさに襲われ、頭の中はキャパオーバーに達した。ぷしゅ、とほっぺから湯気が出てるんじゃないかなぁ。……わぁ、恥ずかしい。


「ああ、悪い。高いの苦手だったな」


そう言いながら、あやちゃんは首を傾げる。悪戯に私を覗き込んで。いつの間にか、浮遊感はなくなっていた。

目に留まったのは黒のピアスと軟骨についてる同色のヘリックス。

学校の一軍男子である菖くんは、左右に片方ずつピアスをしてるけど、あやちゃんは右耳に二つらしい。

初めてしった。左耳はわからない。

ゆっくり、あやちゃんを見上げる。

金髪からトーンを落とした黒髪。
丸みのあったショートヘアは、襟足まで伸びている。溢れる髪を耳にかけた格好が色っぽい。


「もう、怖くありません」

「やるじゃん」

切れ長の瞳がすっと細められた。

「ここまで迷わずに一人で来れたのも偉いよ」

「(子ども扱いされてる)」

———方向音痴も卒業したよ


言いかけてやめた。一咲は子どもだなって思われたくないもん。