甘々とロマンス中毒

名探偵の菖くんは私の思考回路を簡単に見抜く。
ぽわ、と緩んだ顔に『只今、あやちゃんのこと考え中』って貼り紙をしてたのかも…失念。

もっと、こう…クールな表情で、菖くんに図星を突かれてもツンって誤魔化すことができる子になりたい。けど、私がくーる。想像つかないなぁ。

願望虚しく、ぎゅっとリュックの紐を握った。

「そう言えば」菖くんが言うので頷いた。

見上げると、柔らかいベージュ髪が夏風に攫われて、ゆらりと靡く。なあに?


「どうだった?久しぶりの兄貴は」

「エエ〜〜…と、今聞いちゃうんだ。この間、夕飯のお裾分け持って行ったときは、聞かなかったよね」

私が『あやちゃん』って言おうとしたら菖くん、話そらしたんだよ、と小さな不満を溢した。頬を膨らませる。せめてもの反抗だ。

「だって咲、毎日ニヤついてるし上の空だし、やべえと思ったから、ほとぼりが冷めた頃に聞こうとしてたの。でも、ダメじゃん。ずっと浮かれてんのな」

「……ン゛」

「今日もスマホ見て、ふにゃふにゃ笑ってましたね〜(わかりやす)」

菖くんが私の額を軽く突いた。

「まーた、あやみクンのこと妄想してんだ。進展あったの?」

口の端を吊り上げて、意地悪に笑う菖くんの一言に、鼓動がしとしと速まる。

心当たり。ひとつ、ふたつ?みっつ?

わぁ…どうしよ。体……あつい。

「…………な、ない」

「は?なに、その間。怪しいわ」

とぼけるの下手すぎた…っ!

菖くんからの圧に、頑なに結んだ唇を開いた。

「…………あやちゃんと会って連絡先交換して」

「へぇ。で?」

「ら、ラーメン食べに行く約束したけど…今は、一咲便呼んでもらうの待ってるところ、です」