甘々とロマンス中毒

「か…彼女にあやちゃん、て呼ばれないの?」

私の家でクリスマスパーティーをした日。

お兄ちゃんと菖くんがゲームに夢中になってる隙を見て、あやちゃんの耳に手を添え、こそっと聞いた。

だってみんな、雪村くん、あやみくん、あやみって呼んでるんだもん。

近づけた顔を離したとき、シトラスグリーンの香りが、ふわっと鼻先を掠める。あやちゃんが大人の微笑みを浮かべた。


「それは、一咲だけでじゅうぶん」


あやちゃんからの“特別”を貰えたような気がして、死んじゃうくらい嬉しかったの。

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

「どうすれば、振り向いてもらえるんだろ(理科難しいから、やめちゃおー…)」

ある日、宿題に飽きた私は両手で頬杖をついて、呟いた。ノートに王冠を被った王子さまの似顔絵を書く。

くたっと項垂れてため息をひとつ。ぎゅうっと目を閉じた。

夜、いっぱい寝て目が覚めたら高校生になってますようにって、何回もお願いする。

あやちゃんの隣にいても、ちぐはぐじゃない女の子。背も伸びて、髪はふわふわで、甘い匂いのする可愛い女の子になりたい。

明日のお休みはママとお買い物に行って、桜の香りがするハンドクリームを買おう。お洒落は指先からって、ふうちゃんが教えてくれた。

365日×4年は、とっても長い道のりです。

私が16歳になったら、あやちゃんは20歳。

16歳の私は、子ども扱いされない子になってるのかな———…


中学生になって、セーラー服が馴染んできた半年後、あやちゃんは離れた場所で一人暮らしを始めた。仕事が忙しくなったから、と菖くんが教えてくれたの。

あやちゃんに会えるのは、GWやお盆、お正月の大きなお休みだけで。

私は恋をする寂しさを初めて知った。