組の人が跡継ぎを望むのは当たり前のことで、だからお義父さんが『早く次を産ませろ』って陶史郎さんを急かすのも、悪意なんかじゃない。

一花に弟妹をあげたい気持ちはちゃんとある。自分はひとりっ子で、沢崎の父が死んだとき独りぼっちになった。

陶史郎さんが拾ってくれたから、あったかいご飯を食べたり、くっ付いて眠ったりできた。もし自分と陶史郎さんに何かあっても、一花が独りで冷たいご飯を食べなくてすむように、家族を残してあげたい。

弟だったら、跡継ぎだから今度はお義父さんも大事にしてくれるし、妹だったらまた見向きもされないけど、一花は寂しくない。

『樹の体が一番だからね、一花がもっと大きくなってからでも遅くないよ』

陶史郎さんがやさしく頭を撫でて言うから頷いた。けど。

ただ。願いどおりの男の子が生まれれば、陶史郎さんとお義父さんが目を合わせて話せたりするかなって。

陶史郎さんがもう怖い顔をしなくなるのかな・・・って。