陶史郎(とうしろう)さんのお嫁さんになるまで、一月一日は、カレンダーが終わってまた新しくなった・・・くらいの感覚だった。

支倉(はせくら)の家では、元旦から集まった組の人達に挨拶したり、もちろんその前にお義父さんお義母さんに三つ指ついて、これからもお世話になる挨拶に心を込める。

みんな着物で、窮屈だけど我慢。一花(いちか)にもお正月らしく桜柄の袴ロンパースを着せてみた。自分が言うのはおこがましいけどすごく可愛くて、思わず頬ずりして写真を残した。

陶史郎さんはこっちに目を潤ませながら、脇にいた玉置(たまき)さんに『ねぇ、嫁と娘をこのまま冷凍保存していいかな』って真顔で頼んでた。・・・永久保存、の間違いかな。

そう言えば、あれから玉置さんも陶史郎さんも普段どおり。に見えてる。

ヤクザをやめるって。・・・本当に言うのかな。

ずっと小骨が引っかかってるみたいに、思い出すたび胸の真ん中がズキズキする。

本当にそれでいいのかな。わからない。陶史郎さんがそうしたいなら、きっとそれでいい。はず。