ーー推し活。そのおかげで、私たちは今、めぐり会えている。

「ん〜っ! やっぱ推しサイコーッ‼︎」
オレンジジュースをガタンッと机に置きながら叫ぶ。
今年14歳。彼氏なしの15歳、高橋 小夏(たかはし こなつ)。推しにどハマり中‼︎
「ハルトくんやっぱイケメンすぎでしょ! は〜、やっぱ『マスライ』神‼︎」
『マスライ』。それは歌い手の『マスカットライフ』の略である。世間では「ダサい」と言われ続けているこのグループだが、小夏はこのグループの松浦 ハルト(まつうら はると)こと、ハルトくんにどハマりしているのであった。

「おはようございます〜」
朝8時半。学校に着く。今日は絶対に
今日はファンの皆さんとの交流会があるんだから!
世間から「ダサい」と不評を浴びている『マスライ』は、やっぱりファンが少なく、交流できるのは、ファンにとっても貴重なのだ。

ホームルームが終わると、みんなに挨拶をして交流会の場所に向かおうとする。
「「お疲れ様でした!」」
小夏と挨拶をした誰かの声が合わさった。
「あっ、川村さん!」
「高橋さん?」
声の主は、川村 玄太(かわむら げんた)。クラスメイトだ。
「帰るんですね、一緒に帰りましょう!」
小夏が言うと、玄太もうなずく。

「えっと…来る場所同じなんですね…?」
「そう…だね……」
行き着いた先は同じで、一つのご飯屋さんだった。
「「もしかして『マスライ』推し⁉︎」」
息ぴったりに互いの方を指さし叫ぶ。
こんな偶然あっていいの⁉︎
「あはは、そうだったんですね〜! 入りましょう!」
「うん!」
店内は客1人いず、しん…としていた。
「私たちだけみたいですね…」
「まぁ、ファン少ないから…」
まあそうだよね。世間からあんなに不評浴び続けてきたんだもん。
「「なら、語りますか‼︎」」
そこから、2人は2、3時間も時間を忘れて語り合った。

「てかなんで私にだけ敬語じゃないんですか…?」
「…え? 幼なじみじゃん」
幼なじみ? どゆこと?
「いや、私の幼なじみは健太で…」
「健太? 違うよ。げ・ん・た!」
玄太は強くそう言った。
「……聞き間違いってこと⁉︎ 15年間も⁉︎」
「面白かったから黙ってた。てか誰推し?」
切り替え早すぎ…。
「は、ハルトくんだけど…」
「マジ⁉︎ 俺と一緒じゃん! これからも定期的にしようよ! 交流会!」
「そ…それだけは賛成〜」