俯いていた顔を上げると、綺麗な彫刻に並ぶ支配人の顔が柔らかく解けて、
少しだけ笑った気がした。

前にもそんな事を言われた気がするけど、私は決して真面目じゃないのに‥‥

『ある程度の自信が付けば、誰だって
 表舞台で活躍したいと思うのは
 当然の事さ。それは君の素直な
 気持ちだから否定する必要はない。
 ただ言っていた通り、仕事が出来れば
 いいホテリエとは限らない。
 先の先まで見越して行動出来た先に
 相手が感じたものがプラスなら
 そこで初めていい仕事をしたと
 思ってもいいだろう。全ての仕事に
 100パーセント正解な答えなんて
 ない。俺も今でも日々それを探して
 るよ。君から学ぶ事も沢山あると
 思うからいい風が吹くといいな。』

支配人の言葉に胸が熱くなる‥‥

こんなところで泣いたらまた迷惑を
かけてしまうけれど、目頭が熱くなって
グッと力を込めた

『Passage du vent』

風の通り道という素敵なホテルの名に
恥じない自分でいたい‥‥そう思えた