あまり思い出せないくらい精神的にツラかった記憶を思い出してしまいそうに
なり、手に持っていたカトラリーを
トレーに落としてしまった。

『‥‥どうかしたのか?』

「いえ‥‥‥あの、経験者という事は
 なしにしてもらえませんか?」

『どういう意味だ?』

「以前の私は、表に立ちたいとか、
 立派なホテリエとして良い印象を
 残したいとかそんな気持ちばかりで
 働いてました。大切なおもてなしを
 するという根本的な心を忘れて、
 仲間からの‥‥嫌がらせに耐えられず
 辞めたんです‥‥。ここに来て沢山
 学ぶうちに、私にも悪いところが
 あったんだと思います‥‥。
 なので、ゼロから始めたいんです。
 厳しくご指導願えますか?」

自分は何も悪くない。
何で嫌がらせばかりにあうのか理解
出来ないなんてずっと何年も耐えてきた
けど、ここに来て自分の傲慢さに
気づけた気がする。

見下してなんてなくても、相手が不快に
感じていたなら向こうにもストレスは
あったかもしれない。

だからといって嫌がらせは許せない
けれど、もう過去には戻れないから
二度と同じ事で躓きたくないのだ


『フッ‥‥‥真面目だな‥やっぱり。』


えっ?