近づく気配を感じながら、心音だけがどんどん大きくなっていくと、隣に旦那様
が腰掛けたのが分かった

『‥‥もしも俺が身分もない鈴子と
 同じ立場の人間だったら、その瞳に
 映れたのだろうか。』

‥‥‥えっ?


私の左手に触れる旦那様の手に、咄嗟に
逃げようとするも、そのまま強く握られ
てしまい、次の瞬間旦那様に引き寄せられ腕の中に閉じ込められた


「旦那様ッ‥」

『俺はお前をこんな風に一人で泣かせる
 為に側に居させたのではない。
 叶わぬ想いだと理解していても、
 心がどうしても求めてしまう‥‥』

ドクン

更に強く抱き締められると、膝の上に
いたスズが小さく鳴くと膝から飛び降り
たのか何処かへ行ってしまった

『鈴子‥‥正直に答えてくれ‥‥。
 お前も俺と同じ気持ちなら、今宵
 このまま連れ去りたい。』

「旦那様‥‥何を言って‥‥ッ」

『フッ‥‥‥確かに‥‥。鈴子と
 出会ってからずっと胸が締め付けられ
 る思いをここに抱えている。
 おかしなことを言っていると笑って
 くれてもいい‥‥。それでも俺は
 もうこの気持ちを隠せない‥』

「ッ!!」