再逢  小指の約束

手をそっとそこから抜くと、まだ頬に
流れる涙をもう一度優しく拭ってやった


‥‥‥‥鳥山叶香。


正直、履歴書を送ってもらった時点で
断ろうとは思っていた。

ここ『Passage du vent』で働く
仲間のイメージと彼女は異なる気が
したからだ。


ホテル名にもある通り、穏やかで
落ち着いた時間を過ごしていただく
場所に、都会の華やかな彼女が
馴染めないからと思った。


面接に来る前に偶々湖で見かけた
彼女が大きな声で神頼みをしていた
光景が面白くて面接してみようと思えたのに、こんな事になるなんてな‥‥


見た目は綺麗でどこか強そうな気が
したけど、案外涙脆くて感情が豊かな人かもしれない‥‥‥


それに‥‥何故だか分からないが、
他の誰かと間違えられてあんなにも
泣かれたことが気に入らない。


他のスタッフに、俺が泣かしたと
思われたんだから、責任もって
誤解を解いてもらわないとな‥‥。


『フッ‥‥こら‥‥呑気に寝てると
 面接しないからな‥。』


初対面にも関わらず、子供のように眠る彼女が気になり、軽く彼女の頬をつねったあと、頬を撫でた。


日髙side end