『フッ‥‥そんなに緊張せずせっかく
 だから溶ける前に食べなさい。』


目の前には食べたことなどない
アイスクリンが置かれているが、
緊張と不安で落ち着かない


暖かくなった春を迎えた頃、
旦那様に付き添い初めて街に出掛けた
ものの、まさかお仕事ではなくカフェー
に連れて来られるとは思ってもみなかったのだ。


(『わたしの使用人をするのなら、
 今後屋敷以外の事も知っておく
 必要がある。歳を重ねたミヤの
 代わりにお使いに出てもらう事も
 増えるだろうから、勉強だと思って
 来なさい。』)


今朝そう言われたから来たのに、勉強どころか旦那様と向き合って座ることも
初めてで戸惑いしかない。

ただの使用人が主人と食事など
していいはずもないのに‥‥‥


『どうした?気に入らないか?』

「ッ‥い、いえ‥わたしにはとても
 勿体無くて‥‥。」

『いつも休まず働き詰めだろう?
 帰るまでは使用人としてではなく、
 鈴子という1人の女性としていれば
 いい。食べないのなら俺が君に
 食べさせてあげよう。』

「ヒッ!そ、それはご勘弁下さいませ。
 た、食べます‥から。」

喉を鳴らして面白そうに笑う旦那様に
顔を真っ赤にして焦る私は、普段
使うことのないスプーンを手に取り
それを掬って口に運んだ。