『圭吾さんを探しておりました。
 母がお菓子を持って来てくれたん
 です。ご一緒にいかがですか?』


圭吾‥‥さん‥‥?


私の前でハルさんが旦那様の事を
お名前で呼ぶ事など一度もなかった。

ハルさんは華族で旦那様のお世話も
しているし、私が知らなかっただけで
お2人はとても仲が良さそうだ。


『‥母君が?』

『ええ。私達の婚約についてお話しし
 にいらしているのよ。』


‥‥‥‥えっ?


旦那様は‥‥
ハルさんとご結婚されるの?

頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を
受けながらも、動揺してはいけないと
両手に力を込めて地面を見つめた


確かに行儀見習いに来た方は、そのまま
花嫁修行として学ぶ事もあると誰かが
言っていたが、まさかこんな身近にいた
ハルさんだったなんて‥‥‥

『鈴子さん、早く洗濯をしないと、
 間に合わないわよ。』

「は、はい‥‥申し訳ありません。」

2人を見る事も恐れ多くそのまま背を
むけると、その場に座り込み、冷たい
水にまた手を浸して擦った。