「ッ‥お手が汚れます‥‥。」

緩められた瞬間を狙って手を引き抜くと
、あかぎれだらけの手を背に隠した。


『フッ‥‥以前とは別人のようだな。
 あの時の威勢は何処へ行ったのだ?』


「ッ!‥‥も、申し訳ありませんッ!
 旦那様のお顔を拝見したことが
 なかったのです。
 どのような罰でも受けますから
 ここに置いて下さいませ。」

私には行く当てもない‥‥‥
住む場所も何もない‥‥‥だから‥

『罰‥か。‥‥ではこっちを見ろ。』


えっ!?旦那様を見る!?

それは無理な罰だ‥‥。

使用人の掟で、主人と気軽に目を合わせてはならないとある。

ハルさんのような奉公で出向いてる
華族や名のあるお屋敷の方々とは違い、
私は本来直接口など聞いてはいけない
立場なのだ


「‥‥致しかねます。」

『主人の命令だ。表を上げなさい。』


緊張と恐怖で心臓が張り裂けそうだ‥‥

こんなところを万が一他の使用人や
使用人頭に見られたらと想像するだけで
恐ろしい‥‥