『鈴子さんってば‥旦那様に物申し
 たってほんと?』

「‥う‥‥ハルさんそれはもう
 言わないでくださいませ。」

下級の使用人が主人と直接話すなど
許されない時代に、話すどころか目まで
合わせてしまった。

ハルさんは屋敷奉公を兼ねてここに
来ている華族の出で、旦那様のお世話をする事もあり私とは違う立場の人だ。

花嫁修行と言える行儀見習いなんて
私には無縁の話である。

雇い主とはいえ、この半年旦那様に会うことなんてなかったから顔を知らなかったとはいえ、一歩間違えれば首になっていたかもしれない。

今後会う事もないだろうし、数いる
使用人の1人の顔など向こうは覚えて
などいないだろう‥‥

『‥珍しく旦那様が楽しそうなお顔を
 されていたわ。あなたとのお話が
 よっぽど楽しかったのね‥。』

えっ!?

そんな事は絶対にないはず!

だって、旦那様はその猫の首を掴んで
門の外に向かおうとしたから、腕を
掴んで怒鳴ったのだから‥‥

旦那様のお付きの男性が来なかったら、
私はあのまま酷い態度で声を荒げていたかもしれない‥‥