そむけた顔に一瞬柔らかい何かが触れた
と思い前を向くと、サラサラな瑆さんの
髪が頬に触れニヤッと笑われた。


『おっと‥つい興奮してごめん。
 海外生活が長かったから挨拶だと
 思ってね?じゃあ暁人のところに
 行ってくるから少し待ってて?』

「‥‥‥」


作業着姿の私を1人残して爽やかに
ホテルに走って行く瑆さんを突っ立って
見送りながら、自分の手で唇の横を
そっと触った。


‥‥‥‥これって未遂よね?

唇じゃなかったし、なんなら私が
前を向いたからいけないのか?

いやいや、出会って2日で頬にキスを
する人がおかしくないか?

瑆さんにとってはただの挨拶。
私は挨拶なら受け流すべきよね‥‥。

わざとじゃなかったとしても、やっぱり
そんな海外みたいな挨拶にこっちは
慣れてない。

‥‥そもそも今、どこに挨拶する必要が
あったのか分からない‥‥。

好きな人とするのとは違うキス‥‥

この歳でキス一つでこんなに悩むなんて思ってもみなかった。


『どうかしたのか?』

ドキッ