再逢  小指の約束

日髙 side

笑顔を見せた彼女を見て、自分の心臓が
何故か締め付けられる感覚に陥り、左胸をギュッと押さえる。


‥‥‥なんだ?これは‥‥。


よく分からない状態の自分を他所に
メインルームに向かう彼女の背中を
目で追うと、自分の左頬に流れる何か
に驚きそっと指で触れてみる


‥‥‥涙?‥‥嘘だろ‥‥?

大人になってから涙を流したことなんて
一度も記憶にない。


まさか彼女の笑顔に感動して涙を流したなんてことはないはずだ


初めて会ったとき、俺を見て口元を押さえながら泣いた彼女を思い出すが、
いつもの冷静さを取り戻すとメインルームに向かった。


仕事はとても丁寧なんだよな‥‥。

元々ホテリエの経験者だからかもしれないが、それだけじゃない。

彼女には、ちゃんとゲストをおもてなししたいという気持ちが見えるし裏がない


厳しい事を伝えたのは、それだけ彼女
に期待をしているからかもしれない‥‥

吹っ切ったような顔をした彼女が、
ここに来て1番いい顔を見せてくれた。

このホテルにより良い風が吹くといいんだがな‥‥


日髙 side END